富士ソフト Research Memo(6):積極投資と働き方改革が進展、生産性向上効果を顕在化させる次の手に注目(1)

2019年09月17日 15時26分

■今後の見通し

1. 2019年12月期業績は順調に推移
富士ソフト<9749>の2019年12月期第2四半期(累計)の連結業績は、売上高が前年同期比12.8%増の113,556百万円、営業利益が同26.7%増の6,693百万円、経常利益が同19.5%増の6,825百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同12.6%増の3,736百万円と2桁増収増益での着地となった。

この実績を、2019年2月公表の期初会社計画との比較で見ると、第2四半期(累計)計画に対する達成率は、売上高が109.6%、営業利益が125.1%、経常利益が121.9%、親会社株主に帰属する四半期純利益が118.6%となった。通期業績予想(売上高210,500百万円、営業利益11,700百万円、経常利益12,200百万円、親会社株主に帰属する当期純利益6,700百万円)に対する進捗率をみても、売上高が53.9%、営業利益が57.2%、経常利益が55.9%、親会社株主に帰属する四半期純利益が55.8%と、2014年12月期以降で最も高いペースとなっている。

順調な業績推移にもかかわらず、同社は米中貿易摩擦の激化といったマクロ環境の変調を理由に、通期業績予想を据え置いたが、その一方で、第2四半期決算の発表と同時に増配(38円/株→40円/株)を発表した。2013年3月期以来となる中間期での増配発表からは短期業績に対する手応えと企業価値向上に対する決意がうかがえる。

今回のマクロ環境の変調に関しては、景気循環的な部分にとどまらず、自由貿易やグローバル化という従来秩序の動揺が根底にあるだけに今後とも予断を許さない状況と言える。とはいえ、自動車関連におけるCASE領域への投資やFA関連におけるIoT対応やAI活用に絡んだ投資は各社の生き残りを賭けた戦略的投資といえ、不透明感が強いマクロ環境下にあっても相当程度の下方硬直性が発揮される可能性が高いと考えられるだろう。

「安定的・継続的な配当の実現を利益還元の基本方針とし、戦略的な成長投資や急激な経済環境の変化、不慮の事業リスクへの対応などを総合的に勘案して実施する」を掲げる同社が、異例とも言えるタイミングでの増配発表からは2つのメッセージが読み取れる。あくまでも推察ではあるが、先ずは「マクロ環境の変調を感じつつも短期業績に対しては手応えがある、次に「マクロ環境の変調が業績悪化につながったとしても株主還元の強化等により企業価値の安定的向上を目指す」といったメッセージである。

また、同社は2020年5月に設立50周年という大きな節目を迎えるに当たり、不透明感の強いマクロ環境が継続していたとしても、企業価値の安定的向上を目指す一環として、前出の基本方針を堅持しつつも、株主還元を一段と進化させる可能性がある。前回、中間期時点で増配が発表された2013年3月期の期末配当について見ると、期初予想10円/株→中間期時点予想11円/株→期末実績13円/株と段階的に引上げられ、2014年12月期の中間配期初予想の14円/株へとつなげられている。深読みに過ぎるかもしれないが、期末偏重型の増配を避けながら配当政策の自由度を高める一手として、期中増配に踏み切ったと考えることもできそうだ。

2. 先行投資と働き方改革に注力することで、生産性は向上方向にある
同社は、新卒の大量採用を軸とする人材投資に注力する一方で、「ゆとりとやりがい」の実現に向けて、多様なライフスタイルに合わせた働き方改革・支援を真剣に実践している。

具体的には、1990年に導入したコアタイムなしのフレックスであるスーパーフレックス制度を一段と進化させた「ウルトラフレックス制度(スーパーフレックス制度+時間帯を固定することなく30分単位で有給休暇や10分単位のリフレッシュタイムが取得可能)」のもとで、遠隔地勤務の環境整備や全社員を対象とした在宅勤務制度を本格運用に取り組んでいる。こうした結果、2018(集計期間は4月−3月)年には、1)有給取得率:72.9%(民間平均51.1%、政府目標は2020年に70%)、2)在宅勤務利用者:延べ5,930名、3)育児休業取得者:165名、4)月間残業80時間超過者:0名、を達成、外部機関からも、次世代育成支援対策推進法に基づくプラチナくるみん認定(厚生労働省)、女性活躍推進法に基づくえるぼし認定(厚生労働省)の最高位をはじめとして、テレワーク先駆者百選(総務省)、健康経営優良法人(経済産業省)、神奈川子ども・子育て支援推進事業者(神奈川県)といった評価を獲得している。

ここで注目したいのは、労働集約型とされるITサービスでありながら、働き方改革による生産性向上を実現しつつあることである。

短期で見れば、既存社員の稼働時間短縮が生じる働き方改革や新卒の大量採用は人的戦力の希薄化や先行コストの増加に直結するため、1人当たり営業利益(営業利益/期首期末平均従業員数)等の生産性指標にとっては抑制要因となるケースが多い。同社の場合、働き方改革の成果を出しながら新卒の大量採用を開始した2015年12月期以降、直後の2年間は1人当たり営業利益が減少しているものの、2017年12月期からは増加に転じている。

具体的には、単純計算による新卒含有率(新卒採用者数/前年末従業員数)が、2014年12月期1.5%→2015年12月期4.3%→2016年12月期4.6%→2017年12月期5.1%→2018年12月期7.2%と年を追って上昇し、残業時間の削減と有給取得の増加も進んでいる。一方、2018年12月期の1人当たり営業利益は、2014年12月期に比べ3.0%増となる80万円強まで向上、同社が1時間生産性と呼ぶ内部の管理指標については過去最高営業利益を示現し1人当たり営業利益が135万円であった2006年12月期に比べ1.16倍にまで良化している。ICT利活用の実践や勤務形態・労働環境の継続的見直しを通じ、業務の仕組み、社員の「ゆとりとやりがい」の向上が生産性アップにつながっているとみて良いだろう。

今後は、残業削減や有給取得増加の余地が縮小し、新卒含有率のピークアウトが見込まれるため、時間当たり生産性向上による業績押上げ効果が顕在化しやすくなる。長期的には一段の収益性向上を目指すとしている、同社の今後に期待したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)




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