底堅い「ワクチン通貨」【フィスコ・コラム】

2021年04月18日 09時00分

世界経済が新型コロナウイルスの打撃から持ち直すなか、ワクチン接種の進ちょく状況が国・地域の優劣を決める判断材料になってきました。自国優先の方針を進めるアメリカとイギリスは供給戦略で優位に立ち、通貨安への「抗体」も強めています。


今年ドルが想定外に強いのは、バイデン政権の追加経済対策による景気回復を見込んだ長期金利の上昇が要因とみられます。ただ、金利が低下してドル買いに振れるケースもあり、いつも連動するわけではありません。最近ではワクチン接種の進ちょく状況と通貨の値動きとの関係が注目されています。接種が迅速に進めばそれだけ経済の正常化が早まると考えられるので、当然といえば当然でしょう。


バイデン米大統領は就任100日後の4月末までに1億回分の接種を目標に掲げていましたが、想定よりも早くクリアできたため2倍に引き上げました。バイデン氏は4月上旬時点で、目標に向け順調に進んでいると強調。ワクチンの普及は株式市場の強気相場に寄与し、ドルはリスクオンの売りにさらされます。ただ、同時に将来の景気回復を見込んで長期金利が上昇するため、結果的にドル高要因となります。


ドルよりもさらに強いのがポンドです。英中央銀行のマイナス金利導入観測や欧州連合(EU)離脱移行などネガティブな要因があるにもかかわらず、ポンド・ドルは約3年ぶりの高値圏に浮上しています。ユーロとポンドは一般に「欧州通貨」と一括りにされ、ドルに対し平時の際にはおおむね似たようなチャートを描く傾向があります。が、足元でポンドは強含み、ユーロは逆に弱含むトレンドに変わりました。


ユーロ・ポンドの値動きをみると、昨年12月からの5カ月間で実に9%も下落。目下大きな変動要因である長期金利の上昇について、英中銀は容認姿勢、欧州中銀(ECB)は否定的見解に分かれました。イギリスは政治的駆け引きを思わせるワクチンの供給戦略により、人口のほぼ半数が接種を終えています。接種率は4月中旬時点でアメリカが4割、EUは2割以下で、そのままポンド、ドル、ユーロの強さを反映しています。


各国がワクチン獲得に奔走するなか、露骨な自国優先主義で主要国をリードするアメリカとイギリスに対し、海外向けの生産が追い付かなくなるとの懸念から「ワクチン・ナショナリズム」との批判もあります。ただ、ドルは価値が低下することのない基軸通貨で、ポンドも過去にはそうでした。両通貨は通貨安への抵抗力を持ち合わせているという意味でワクチンのようだと言えそうです。


目先の注目材料としては、ワクチンの有効性に関する論議でしょう。足元では血栓との関連が取りざたされており、治験の状況を見極める状況です。そうした懸念が払しょくされれば、ドルとポンドの買いは再開するかもしれません。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

(吉池 威)



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