年末に向けたドル円の行方【フィスコ・コラム】

2021年10月24日 09時00分

春先以降こう着状態だったドル・円が動意づき、4年ぶり高値圏に浮上しています。日米金利差の拡大や「日本売り」に近い円売りが背景にあるようです。ただ、年末に向けリスク要因が意識され、金融環境の変化により上昇ペースは緩慢になる可能性もあります。


9月21-22日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)で、当局者はテーパリング(量的緩和の縮小)に関し年内開始で意見がほぼ一致し、政策金利の引き上げも2022年中との見方が広がります。長期金利は騰勢を強め、ドル買い優勢に。そうしたなか、ドル・円は2019-20年の高値圏である112円台を上抜けたことで勢いづき、114円台に上昇。2017年11月の114円74銭に迫る場面もあり、115円が視野に入ってきました。


足元で発表された米経済指標のうち、インフレ指標は高水準を維持。ウォラー連邦準備理事会(FRB)理事は10月19日の講演で、インフレ高進が続くなら早期利上げを支持するとの考えを示しています。FRBは11月2-3日開催のFOMCでテーパリングの年内開始を決めるとみられ、市場はそれを織り込み始めています。アメリカのほかイギリスでもインフレ懸念で利上げ期待が広がり、内外金利差拡大で円安は鮮明です。


ドル・円は春先以降、おおむね107-110円のレンジ相場が続いていましたが、年末に向け足元の上昇基調を維持できるでしょうか。原油高は資源国通貨を押し上げており、カナダドルや豪ドル、さらにスイスフランも円に対しては数年ぶりの高値圏と、クロス円も全般的に堅調地合いです。原油高は決済通貨のドル買いの半面、日本の貿易収支を縮小させるとの見方から、いわば「日本売り」のような円売りも指摘されます。


年末に向けて警戒されるのは、米連邦債務上限の引き上げに関する懸念でしょう。アメリカが債務不履行(デフォルト)に陥るなど常識的に考えられませんが、議会の合意を進めるためにメディアや格付け会社が不安を煽ることでリスク回避ムードが広がるかもしれません。もう1つ、FRB内の人事も足元のドル買いを弱める要因として注目されそうです。


ローゼングレン・ボストン連銀総裁とカプラン・ダラス連銀総裁は金融取引により当局者として責務が問われ、任期途中で退任しました。また、クオールズ副議長は任期満了に伴いすでに退任。さらにクラリダ副議長が来年1月、パウエル議長は同2月に任期を迎えます。現時点ではパウエル議長再任がメーンシナリオですが、昨年株安局面で500万ドル規模の株式投資信託を売却したと報じられています。


今後この問題がクローズアップされて退任する方向となれば、民主党政権に近く、最もハト派寄りとして知られるブレイナード理事の議長昇格案が浮上しそうです。その際には引き締めペースの鈍化は必至でしょう。ドル・円の115円は想定レンジの上限でもあり、年の瀬を115円台で迎えることができれば2022年は一段高、114円台なら逆に失速との観測が広がるかもしれません。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。




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